サウンドアーカイブスジャパンとは

◆一般社団法人サウンドアーカイブスジャパン 設立に際して

 私は、90年の衛星音楽放送ST.GIGAの立ち上げから、世界中をロケし、収録してきた音の数々をアーカイブし、放送の為のライブラリーを設立しました。
 そして、収録した音を使用して多くの番組やCDなどを制作しました。その後も、インターネット上のコンテンツ[Sound Explorer]で世界の音をライブ発信し、世界のサンライズ、サンセットの音の地球儀を創り、多くの音をインターネットを通じて提供してきました。また、一般の人達との世界音の旅「Sound Bum」では、音のガイドとして、世界各地の音を紹介、ナビゲートして、記録した音をWEBサイトに上げ、訪れた場所のサウンドマップを制作してきました。FM放送J-waveでは世界を旅する番組「VOYAGE」や環境がテーマの「Blue Planet」で世界の音を聞かせ、PODキャストも制作しました。日本科学未来館のメガスターでは、1作目よりプラネタリュウムの音を制作し、世界の音を素材に詩人の谷川俊太郎さんとのコラボ作品「夜はやさしい」も制作しました。そして、その結果多くのデジタルテープが残り、何十台ものハードディスクは音でいっぱいになりました。
 しかし、ST.GIGAで収録した音のライブラリーは、放送局の消滅と共にどこかに消え、制作したWEBサイトの音もコンテンツの終了と共に消えました。でも、私の手元には多くの世界の音が残っており、静かに眠っております。

 一昨年末、世界を一緒に音の旅をした友人がロケ中の事故で亡くなりました。その彼の残したものを整理し、残した仕事を片付けている時、もし自分が死ねば、これらの手元にある音は捨てられる事になるかな?と実感しました。実は以前からその考えはあり、海外の友人アーティストにも相談をしておりました。
 また、90年代に立ち上げから関わった、日本サウンドスケープ協会でも、公的な音の博物館ができないかと国への要望書を提出したりもしました。しかし、出版物の保存はされていても、様々な音の保存、アーカイブはされません。どうしたら良いかと、長年考えておりましたが、やはり自分達で組織を創るしかないと結論に達しました。

 実は、1997年に「Sound Explorer」のコンテンツの制作の折、世界各地のSunrise,Sunsetの音を求めて訪れた大英図書館のサウンドアーカイブのあり方にヒントを得ています。このサウンドアーカイブでは、早くから音楽や放送番組の音のアーカイブだけでなく、あらゆる音のアーカイブを制作しております。それは世界各地で様々な研究をしている研究者が記録した音、それぞれの目的で記録された音をアーカイブし、それを役立てています。目的の音を探す作業をしながら、当時の責任者であり、世界的なフィールドワーカーと話をした時、その仕組みを教えてもらいました。アーカイブされた音の利用で生じた資金は3割ほどその音をドネーションした研究者にフィードバックされます。アーカイブされた音の利用は、様々な分野で利用が可能です。
 今回、設立したサウンドアーカイブスジャパンでも、私自身がドネーションした音だけでなく、音のアーティスト達や、世界をフィールドワークする研究者が収録された音など、貴重な音をアーカイブしていくつもりでおります。サウンドアーカイブスジャパンは音の受け皿とも言えましょう。さらに、アーカイブするだけでなく、それらの音を役立てる事も考えております。WEBのコンテンツや放送番組だけでなく、サブスクの音や、デジタル教科書など新しい分野にも生かすことができます。もちろんそこで生じた資金の一部は音の提供者にフィードバックされます。

 何よりも、この瞬間に消えていく様々な地球の音を録音し、蓄積し、将来に生かしていく。それは一人でできることではなく、また一企業の商業的な活動でもないでしょう。より社会に貢献する、公的な組織として、活動していければと思っております。また、アーカイブされた音を新たに生かす、いくつかのプロジェクトを行う人々との共同作業でもあります。そして、それは音を介して、様々な土地の社会、文化をアーカイブしていく作業とも思っております。
これを読む方々の賛同を得て、共に少しずつ進んでいければと思っております。

        発起人 サウンドアーティスト サウンドデザイナー
                           川崎義博

川崎義博(かわさきよしひろ)プロフィール

サウンドアーチスト/サウンドデザイナー。日本のフィールドレコーダーの草分け的存在。1990年衛星放送St.GIGAの開局と同時にプロデューサーとして、世界各地をフィールドレコーディング、番組制作多数。CD「知床」「バリ島」「トリニダードトバゴ」「奈良・吉野・高野山」「佐藤初女/母の心をすべてに」など14作品。DVD「屋久島」の音制作なども。’97年世界で初めてのリアルタイムで世界の音が聞こえるWEBサイト「SoundExplorer」を手がけ、その後、SoundBum、AQUA-scapeなどのサイトも制作。インスタレーションは、’91年東京パーンを始めとし、日本武道館など様々な場所で展開。又、日本科学未来館、東京都写真美術館、金沢21世紀美術館(オープニング展)での世界の音の作品がある。
また、日本科学未来館のプラネタリウム「MEGASTAR 」の番組を手がけ、「新しい眺め」「星野道夫/アラスカの星の下で」「偶然の惑星」世界の音を使った谷川俊太郎さんとのコラボ「夜はやさしい」なども制作。東京藝術大学、多摩美術大学などで音の表現を教え、バシェ音響彫刻の修復なども行なっている。日本サウンドスケープ協会も立ち上げから関わり活動中。